欧米ゴースト映画10選 · ゴースト・ストーリー · 戦争の記憶と子どもの連帯 · 2001

『デビルズ・バックボーン』、忘れられた場所の声

スペイン内戦末期の孤児院を舞台に、幽霊と子どもたちの記憶が、生者の欲望と沈黙を静かに暴いていく。映像と音の余韻を読む。

『デビルズ・バックボーン』は、スペイン内戦末期の荒野に置かれた孤児院を、逃げ場ではなく過去が沈殿する容器として撮る。カルロスが着くのは、庭の中央に不発弾が突き刺さった建物だ。爆発しない爆弾は戦争を説明する記号ではなく、生活の真ん中に停止した時間である。デル・トロは廊下、地下室、貯水槽のような場所を、奥行きのある暗がりとしてつなぐ。壁の向こうに何かがいるというより、建物そのものが見過ごされた記憶を抱えている。美術の奇怪さは装飾に終わらず、子どもたちが大人の秘密へ近づくための地図になる。Criterionも本作をゴシックな幽霊譚、殺人ミステリー、歴史劇の結合として紹介している。[1] その混ざり方が、空間を単なる恐怖の舞台から、戦争と欲望が同居する家へ変えていく。

音が呼び戻す過去

この映画の音は、驚かせる効果音よりも、音が届かない時間を大切にする。遠くの風、古い建物の軋み、子どもたちの小声が、画面外の出来事を先に知らせる。とりわけ名前を呼ぶ声は、姿を見せる前から孤児院の空気を変える。声の主をすぐ説明しないことで、カルロスの不安は「何がいるのか」から「誰が聞いているのか」へ広がる。ハビエル・ナバレテの音楽も、感情を大きく指示するより、悲しみの底に薄く留まる。静寂は安全ではなく、次の音を待つための緊張だ。だから幽霊の出現場面でも、音量の強さではなく、現実の音と記憶の音が重なる感覚が残る。映画.comが本作をノスタルジックな恐怖として捉えるのは、過去が回想に閉じず、音を通して現在の生活へ戻ってくるからだろう。[2]

物語の進み方は、謎を一つずつ解いて爽快に前へ進むタイプではない。カルロスが見聞きする断片は、孤児たちのいじめ、大人たちの欲望、戦時下の金の行方へと枝分かれし、同じ場所を別の記憶から見直させる。デル・トロは説明を遅らせるが、情報を出し惜しみしているわけではない。何が起きたかを知るほど、それを見ていた人々がなぜ沈黙したのかが重くなるからだ。子どもたちの視線は調査の道具であると同時に、生き残るための連帯でもある。大人の世界が秘密を所有するなら、子どもたちは噂と遊びと恐怖を共有して対抗する。先へ進む推進力は犯人探しだけでなく、誰の記憶を信じるかという選択にある。MoMAも、父を失ったカルロスが幽霊のいる孤児院へ送られ、子どもたちが危機に立ち向かう物語として紹介している。[3]

サンティの幽霊は、脅かすために輪郭を得る存在ではない。水の気配をまとった顔や、視線の定まらない出現は、死者がこの世へ完全に戻ったのではなく、戻れないまま場所に結びついていることを示す。彼は怪物として整理されず、子どもたちの恐怖と同じ画面に、被害を受けた者の未完の感情として置かれる。ここで怖いのは幽霊の能力より、死者を生んだ大人たちの現実が、幽霊よりも具体的な力を持つことだ。幽霊の動きが遅く、時にためらうほど、生者の欲望の速さが際立つ。水、煙、血の色を思わせる映像は、死を固定せず、記憶が形を変えながら残る過程を映す。映画.comの紹介がサンティの霊を物語の背後で介入する存在と記すように、彼は謎解きの鍵であるだけでなく、見捨てられた子どもたちの側に立つ気配でもある。[2]

幽霊は誰の側に立つのか

本作の感情は、恐怖から悲哀へ、悲哀から怒りへと単純に移らない。カルロスが新しい場所で友を得るほど、孤児院が守られている場所ではなく、守られなかった記憶の集積だと分かってくる。戦争は背景の年代表示ではなく、親を奪い、金を隠し、成人の判断を歪めて、子どもの成長を急がせる条件である。それでもデル・トロは子どもたちを象徴へ縮めず、嫉妬や臆病さを含む具体的な関係として描く。だから終盤の連帯には、正義の勝利というより、奪われた時間を自分たちの手へ取り戻す切実さがある。Criterionが「最も恐ろしい怪物は人間である」と述べる本作の要点は、悪人を単純に怪物化することではない。[1] 人間の選択が、幽霊より長く場所を汚染するという現実にある。

『デビルズ・バックボーン』は、ゴシック映画の意匠を借りて、死者を怖がる物語から、生者が過去にどう責任を負うかという物語へ進む。デル・トロの後年の『パンズ・ラビリンス』を先取りする要素はあるが、本作の魅力は類似点ではなく、内戦の傷を孤児院という閉じた共同体の倫理へ落とし込んだ密度にある。幽霊は忘却に抵抗し、子どもたちはその記憶を受け取る。 怖さが薄れた後に残るのは、死者が去った安心ではない。語られなかった過去を聞き取った子どもたちが、同じ場所を別の未来へ向け直す、その痛みを伴う希望である。

参考資料

作品情報は以下の資料を参照しています。

  1. The Devil’s Backbone
  2. デビルズ・バックボーン
  3. El Espinazo del Diablo (The Devil's Backbone)

10eKokoroが書いています

台湾出身で映画を愛するバリスタ、10eKokoroの映画ノートです。

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