欧州成人指定アクション映画5選 · 成人向けサバイバル・アクション · 北方の民話と身体性を結ぶサバイバル・アクション · 2022

SISU/シス 不死身の男|不屈の身体が走る荒野

フィンランド発の『SISU/シス 不死身の男』を、章立てされた動作設計、ラップランドの撮影、低台詞の演技、爽快さと類型化の限界から読む。

『SISU/シス 不死身の男』は、ヤルマリ・ヘランダー監督・脚本による2022年のフィンランド映画だ。フィンランド映画基金は本作を「action film」と呼び、ラップランドでナチス兵から逃れる男の物語、フィンランドのSubzero Film Entertainmentと英国Good Chaosの共同製作と記す。[1] 日本の公式配給ページも、邦題、原題SISU、91分、フィンランド製作を確認させる。[2] 本作の重心は逃走の事情を説明することより、追われる身体が環境に応じて動く過程にある。荒野は背景にとどまらず、行動の制約と可能性を同時に示す。

地形を反転させる動作設計

動作の面白さは、荒野や乗り物を次の反転の道具へ変えることにある。主人公は不利な地形を読み替え、敵との距離を短い判断で更新する。Varietyが述べる通り、異なるセットピースを章のように積む構成は、軍事的リアリズムより誇張された身体性を選ぶ。[4] だから緊張は恐怖だけでなく、乾いた笑いへも変わる。距離は単なる位置関係ではなく、誰が優位に立つかを測る尺度となる。観客の関心も、危機の深刻さから、それをどう切り抜けるかという動作の発想へ移っていく。誇張は危険を軽くする一方、反撃の意外性を楽しむ余地を作る。

撮影はフィンランド北部の白い空間に人物を小さく置き、シネスコの横長画面で孤独と距離を見せる。公式資料の91分という短さも、長い説明より動きを優先する編集に合う。[2] 明るい雪景色と閉じた車内を切り替え、移動、遭遇、反撃を反復する編集は速い。開けた画面では人物の小ささが逃走の困難を示し、閉じた空間では身体同士の近さが圧迫感を生む。白い景色の明るさは安全の印ではなく、身を隠す余地の乏しさとしても働く。この広さと狭さの往復が速度の感覚を支える。ただし、次の見せ場を待つリズムが歴史の余白を削る。

Jorma Tommilaの演技は、台詞を極端に抑え、歩き方や視線の遅れで過去をにおわせる。Varietyが指摘する寡黙な主人公は、表情より道具を選ぶ手つきで意志を示す。[4] 言葉による説明が少ないため、歩調や判断までの間が人物を読む手がかりになる。視線の遅れは、動作の速さだけでは捉えられない身体の重みを残す。敵側の類型性も含め、人物の複雑さより、無言の身体と騒がしい周囲の対照が画面のテンポを作っている。静と動の差は耳にも及び、主人公の沈黙を周囲の騒がしさから際立たせる。

白い画面に残る身体の限界

その明快さは限界でもある。主人公の不死身性と反撃の反復は後半ほど驚きを薄め、戦争や喪失の背景を単純化する。危機を突破する型が見えるほど、観客は身体の限界より次の工夫を待つようになる。爽快さを生む設計が、苦痛や喪失を受け止める時間を短くするのだ。Varietyも、この過剰な楽しさは万人向けではないと示す。[4] 一方、FSKの個別記録はドイツHome Entertainment版を91分08秒、2023年6月26日指定のFSK 18(Freigegeben ab 18 Jahren)とし、「暴力、傷害」を補足している。[3]

『SISU』は、北方の地形と不屈の身体を結び、説明より運動で物語を進める。その単純さは戦争の歴史を平板化する一方、ひとりの人が荒野を読み替える行為に寓話的な力を与える。不屈さは抽象的な精神論ではなく、距離を測り、道具を選び、動き続ける身体の判断として伝わる。そこに北方の民話を思わせる力と、人物の内面を十分には語らない限界が重なる。フィンランド映画基金が「action film」と位置づけるように、ここでは身体の動きそのものが物語の主語となる。ドイツのFSK 18は特定のHome Entertainment版に限られ、日本版R15+とは別の地域・版の分類である。[1][2][3]

参考資料

作品情報は以下の資料を参照しています。

  1. Jalmari Helander’s Sisu to premiere at Toronto IFF
  2. 映画『SISU/シス 不死身の男』公式サイト
  3. Sisu - FSK
  4. ‘Sisu’ Review: The Road Runner Versus Nazis

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台湾出身で映画を愛するバリスタ、10eKokoroの映画ノートです。

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