日本ホラー名作20選 · 選ぶ欲望 · 2000

『オーディション』は誰が誰を選ぶのか

再婚相手を探す偽のオーディションを通じ、選ぶ側の欲望と選ばれる側の沈黙が反転する。三池崇史の静けさと痛みを読む。

『オーディション』は、妻を亡くして七年になる青山が、映画の出演者を探すふりをして再婚相手を見つけようとするところから始まる。[2]日本での劇場公開日は2000年3月3日で、監督は三池崇史。[1]この二つの情報だけでも、作品の不穏さは見えてくる。人生の空白を埋めたい男が、出会いではなく審査を選ぶからだ。青山にとって女性は、話を交わす相手である前に、条件に合うかどうかを確かめる対象になる。映画はその視線をいきなり断罪せず、むしろ手際のよい計画として静かに進める。その平静さが、後から見ると最初の恐怖になっている。

選ぶ視線のつくられ方

麻美は、青山が望む「美しく、上品で、従順」な像に近い存在として現れるが、椎名英姫の演技はその輪郭をすぐには固定しない。[2]物静かで、どこか古い部屋の隅に置かれた家具のように見える彼女の沈黙は、媚びでも無垢でもなく、相手の欲望を映す空白だ。青山はその空白に自分の理想を書き込む。だから彼が麻美を「見つけた」と思う瞬間、実は見ているのが彼女ではなく、彼自身の都合だとわかる。タイトルのオーディションは、女性が試される場であると同時に、男の見方が試される場でもある。選ぶという行為は、相手にも選ぶ権利があると認める限りでしか、愛情の形を保てない。

三池の仕掛けは、ジャンルの転換を派手に予告しないことにある。BFIのインタビューで監督は前半を意図的に遅くし、後半では場面を継ぎ目なくつないで予測を奪う構成を説明している。[2]再婚や家庭の気配から始まる前半に、観客は物語の速度を預け、これは中年の孤独をめぐる小品なのだろうと安心する。その安心は、恐怖の反対ではない。恐怖がまだ名前を持たない時間である。編集は情報を隠すだけでなく、こちらの期待を育ててから、それを自分の思い込みとして返してくる。遅さは退屈ではなく、見る側を共犯にするための準備なのだ。

画面に残るのは、東京の家庭、選考の部屋、海辺のホテルといった、特別ではない場所の輪郭だ。[3]そこに電話の待ち時間、ドアの向こうの気配、椅子に座る身体の距離が重ねられる。三池は怪異を遠い世界から連れてくるのではなく、日常の配置を少しだけずらす。音も同じで、悲鳴や効果音を連打するより、聞こえるはずのないものを待つ間を長くする。観客は画面を見ているのに、画面の外へ耳を澄ますようになる。静けさは安全の印ではなく、何かが起こる余白だ。その余白を保ったまま、身体の痛みだけが急に具体的になるとき、映画は視線から触覚へと変わる。[2]

静けさが反転するとき

この映画の位置も、作品そのものの揺れを映している。BFIによれば、初上映は1999年末のバンクーバー国際映画祭で、欧州では2000年のロッテルダムで紹介された。[2]一方、日本の劇場公開は2000年3月3日だった。[1]つまり「1999年の映画」という呼び方は国際初上映の年としては通じても、日本で観客に届いた年とはずれる。『オーディション』が、恋愛映画の顔をしてホラーの地面を歩き、既存の恐怖の型から少し外れた場所に立つのも偶然ではない。BFIは、当時のハリウッドのティーン向けメタ・ホラーに対する、日本発の心理的な不安と緊張を育てる映画の波の一作として、この映画を位置づけている。[2]文化的な説明を重ねすぎなくても、作品が「何を怖がるか」より「誰の視線を信じるか」を問い直したことは伝わる。

麻美を単純な怪物にしてしまえば、映画はもっと軽くなる。だがBFIが紹介するように、この作品は善悪の二分法ではなく、傷ついた人物が他者の意図を信じられない状態を見つめている。[2]椎名英姫の演技も、表情を大きく動かさないまま、愛されたいという願いと、愛を疑う警戒を同じ画面に置く。ここで痛いのは、彼女の過去だけではない。青山が「理想の女性」を探す行為と、麻美が独占的な愛を求める行為[3]が、互いの孤独を埋めるどころか、相手を所有したい欲望として重なってしまうことだ。三池はこのねじれを、単なる恐怖の見世物ではなく、愛の手紙に似たものとして語っている。[2]その言葉を信じるかどうかは別として、『オーディション』は愛を美しい感情に戻す前に、愛の中に混じる選別、支配、期待の重さをこちらの手に載せる。だから見終えた後に残るのは、叫びの印象より、誰かを理解したつもりになることへのためらいである。

参考資料

作品情報は以下の資料を参照しています。

  1. AUDITION オーディション
  2. “You are sick!”: Audition at 25 – Takashi Miike on his deranged duet of discomfort
  3. オーディション(1999年)

10eKokoroが書いています

台湾出身で映画を愛するバリスタ、10eKokoroの映画ノートです。

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